水曜日, 8月 11

アリスへの決別

アニメディア立ち読みの代償として、D書店で購入。
SFマガジン初出の「地球から来た男」と「オルダーセンの世界」は既読だけど、ほかの収録作5本は未読だし、「地球から~」はそこそこ面白かったので、買って損は無いだろうという判断。

アリスへの決別
児童ポルノ法への反論とSFガジェットを組み合わせただけで、ストーリー的には全くヒネリが無いため、設定を把握してしまえば後は完全に予想通りの内容だけで終了。まぁページ数の少なさとか読者層(←ロリコン雑誌うぶモードって聞いたこと無かったけど、コアマガジンの出版なのか。何にせよ、本格SFを載せるような雑誌じゃないわな)を考えれば致し方ないか。

リトルガールふたたび
不謹慎な内容で「あくまでコメディ(パロディ)ですから!」という断りの入った作品というのは、判断が難しくて困る。断りさえ入れれば何を書いてもいいとすれば、それ自体が不謹慎であって(←いわばメタ不謹慎?)、そもそも作者がパロディと自覚しているのか、それとも本気なのか判別しづらいんだよね。
全世界が、何の躊躇いもなく核兵器廃絶の流れに向かう中で、日本“だけ”がひたすら愚かな選択を積み重ねて破滅に至る…などというあり得ない展開は、典型的な自虐的思考から出てきたような発想だし、ネット世論に対する嫌悪感あふれる否定ぶりなども「いかにも山本弘なら書きそうだ」と思ってしまう内容なんだけど、そう読者に思わせることも計算に含めた上で、極端にデフォルメされた世界を描いたとも取れる。
「去年はいい年に~」でも感じたけど、最近の山本弘は、こういう自分の思想・姿勢そのものを芸風にしている気がするんだよね…もちろん「リトル・ボーイ再び」への返歌だというのは分かってるんだけどさ。
あと“独裁者なき独裁”の可能性が増すことについては同意するものの、それならオチまで徹するべきだったのではないかと。「クーデターを起こして、権力を掌握した軍人の独裁(←しかも世襲)でした」では、テーマに沿っていない気がするぞ。「リトル・ボーイ」との関連性から考えても、第2次GHQ占領政策によるものだった…みたいな真相にした方が、しっくり来ただろうに。

地球から来た男
既読なので感想は省略するけど、こんなシンプルすぎる題名、すでにどこかで使用済みと考えるのが普通だろ…事前にちゃんと調べろよ(笑)。

夢幻潜航艇
この書き下ろし作品のためだけでも、買う価値はあったと満足。現実と無意識の境界領域に棲息する海生生物…というイメージは、ZUNTATA版ダライアス外伝の設定を思わせるものがあったけど、クライマックスの邂逅シーンは、むしろダライアスバーストのJゾーンENDだった…集団知性を持つ〈魚〉はベルサーというよりシーマだし、彼らとの接触を試みるヒロインの姿は、ジ・エンブリオンを説得しようとするTi2だな。
TRPG系に関わりが深いことは周知の山本弘だが、アーケード方面はどうだったっけ? むかしのゲーメストの読者ページに「1945」という極めて不謹慎な(笑)パロディゲームのネタが掲載されており、その投稿者の名前が他ならぬ“山本弘”だったんだけど、あれは果たして本人なのか…?
あとがきによると、原型となる話が書かれたのは'85年で、初代ダライアスが'86年発売だから、直接関係は無いようだ。また〈魚〉のイメージの由来は「天使のたまご」かと思ったんだが、これも'86年の作品だから無関係…のはず。あくまで、あとがきを信用するならの話だけどねー。
まぁ別にパクリ云々とくだらない話をするつもりは無いものの、つい関連性を妄想してしまう好奇心は、なかなか抑え難いものがあるので困る。中盤の、さまざまな世界を転々としていく展開は宇宙刑事シリーズの、幻夢界とか不思議時空を想起させるものがあるし…マネキンが並んでる、ちょっとホラー風味なシーンとかさ。
〈魚〉と感応した際の言語表記のアイデアは、海外SFに元ネタがあるらしい…まぁ小説媒体のSFなら、こういう文字をいじくり回す手法なんて誰でも思いつくというか、つい試したくなるのがSF屋のさがだろう。個人的に「SFで言語ネタ」といえば森岡浩之だったのに、最近あまりお目にかかっていない&「アイの物語」や本作の印象で、すっかり山本のほうが、お馴染みになってしまった感がある。

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