火曜日, 8月 17

ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)

自宅近くの古本屋で、20%引きセールを利用して800円で購入。オビが付いていたので安心していたが、チラシが含まれていなかったのは残念…当時の世相を反映した写真とか、けっこう資料的な価値もあったので、できれば読みたかった。

まだ連載体制(というか人気)が固まっていない初期だけあって、第1話(ドラえもん登場回)が3種類あったり、キャラデザや性格が現在と異なっている点などは興味深い。巻末の特別資料室によると、しずかの名前が「しず子」だったり、ドラえもんの肩書きが「セワシの子分。犬と猫のできそこないロボット」だったり──ひでえ(笑)──するし。

未来の国からはるばると
まだ設定が確立されていない事もあるのか、タイムマシンが2台ある(←ドラえもん用とセワシ用)ように見える。

ドラえもんの大予言
この頃のタイムテレビは、おもに投影用として使われていたんだな(←「机からとび出したドラえもん」でも同様)。

けんかマシン
パーマンにでも登場しそうな、ガラの悪い大人連中がゲストで出てくるのも、初期作ならでは…そう考えると完成したドラえもんワールドというのは、非常に居心地のいい世界なんだな。
クルクルパー」や「ノータリン」などの罵詈雑言だけでなく、ケンカ相手の手足を引きちぎる残酷描写までそのまま掲載されているあたり、まだこの頃は最近の巻に比べて、表現規制が緩やかだったんだろうか?

愛妻ジャイ子!?
初期の特徴として、しばしばセワシが登場していたのは驚いた。そのセワシを呼ぶママの声が机から聞こえるのは、ママもタイムマシンで来たのか、あるいはタイムトンネルの距離が非常に短いのか?

のび太が強くなる
またもや不良連中が登場。それはさておき、初期にはお母さん(←まだ「ママ」とは呼ばれていない)が甘やかしていたのが、のび太の成長阻害要因のひとつだったというのは意外だった。
ドラえもんの透明化能力は知っていたけど、他の人に存在を知られないようにするためのものだったのね・・・こういう“秘密の保持”みたいな特徴づけを行なっていたのも、まだ作風を模索していたからか。

おいかけテレビ
まだテレビが文化の中心にあった、古き時代に描かれたエピソードという感じ。21世紀初頭でさえネットに押されつつあるぐらいだから、22世紀もなると全く原形をとどめていない可能性もあるわけで、ドラえもんのトンチンカンな行動もある意味ではリアルなのかも?

マル秘スパイ大作戦
道具のアイデアとかストーリー構成の面で、後にテンプレートとなるような要素がようやく散見されるようになってきたな。

白ゆりのような女の子
泣かせ系のドラマやSFなど“ドタバタギャグ以外の話を描ける”という可能性が、ここで初めて見出されたようだ。こうして「おばあちゃんのおもいで」につながって行くわけね。

ロボット福の神
道具デザイン:藤子Aですか(笑)。のび太の「あんたたち関係ないでしょ」のツッコミに、この巻で初めて爆笑した。このあたりから本格的にギャグが開花していき、次々と傑作を生み出していくことになるんだな。

のぞきお化け
正統派SFのアプローチじゃない形で、こういう宇宙人が描かれるのも初期ならでは…と思ったが、「未知とのそうぐう機」や「天井うらの宇宙戦争」があったか。意外なオチだったのは間違いないけど。

ドラえもん未来へ帰る
これまたドラえもんワールドらしからぬ世界観だ…でも、こういう図々しいキャラ連中がうろつき回るほうが本来の藤子作品の作風に近くて、むしろドラえもん世界のおとなしさは例外的なんだよな。
“タイムマシンを悪用する人間が増えたので利用が規制される”というアイデア自体は正統派SFっぽいんだけど、ドラえもんワールドとは肌が合ってないというか、そもそも「さようならドラえもん」を超える最終回なんてありえないわけで。

ドラえもんがいなくなっちゃう!?
…と思ったのに、これはなかなか良い最終回だった。まぁお約束の展開ではあるし、「さようなら~」に敵わないのは当然としても、充分に及第点あげられる出来。
しかし次のページをめくったら…感動を返せ(笑)。いや、リアルタイムの読者が1年間待たされたのは分かってるけどさ。「6年生は大事なとき」というセリフに準拠するなら、一連の「小学六年生」掲載分の話に登場するのび太は、6年生という設定なのか?…まるで成長してない(笑)。まぁ「一生に一度は百点を…」では少しだけマシになったような気もするけど。

ドラえもんだらけ
のろのろ、じたばた

“ドラ焼きで釣って、宿題をやらせようとする”という導入部分は共通しているけど、てんとう虫コミックスでは「のろのろ~」のほうが先に収録されていて、なんか違和感あったんだよね。やはり「ドラえもんだらけ」のほうが先に描かれていたのか…ようやく長年にわたる胸のつかえが取れた(笑)。

ドラえもんの歌
ジャイアンの音痴設定が初登場…と思ったら、ドラえもんのほうがヒドい歌声だったという(笑)。ドラが本気で怒って暴れるとジャイアンより怖い…というのも初期ならではのノリだな。

プロポーズ作戦
若いころのママが可愛すぎる…というか、まるで別人だな。ただしメガネ装着後のみ(笑)。パパに妹がいたという設定は、この回かぎりの思いつき? まぁ最後がいい話で終わったから、細かいことはどうでもいいや。

巻末解説鴻上尚史。何に拘るか/拘らないかという基準は、人間ひとりひとり異なる。それはクリエイターにおいては“作家性”となり、しばしば設定やストーリー展開に穴(=ツッコミどころ)を生じるものの、むしろその大らかさこそが愛されるべきである…という内容。
確かに、整合性の確保を最優先したような作品は、突出した魅力に欠けて味気ない場合が多いな。問題は整合性の有無それ自体ではなく、作品がつまらないからこそ、そういう枝葉末節が気になってしまうわけだが。ほんとに面白い作品というのは目を逸らすヒマなんて無いから、そんな細かいことは目に入らなかったり、ダメな部分まで含めて愛さずにいられなくさせるパワーを持っているんだよね。

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