月曜日, 5月 25

詩羽のいる街

SFマガジンの書評で紹介されていたが、実際はSF要素ほぼ皆無。内容的には嗜好・思想ともにいつもの山本弘作品で、その面では激しく評価の分かれるところだろう。俺的には、図書館に予約を入れて待ち続けたのは正解だった。通勤の暇つぶしとしては役に立ってくれたが、カネを払うまでは行かないというランクづけだな。

俺自身の価値観がどちらかといえば性悪説寄りなので、基本的に性善説ベースの物言いに胡散臭さとか反感を感じるんだろうか。まあ性善説ベースでも「シュレディンガーのチョコパフェ」とかは面白く読めたし、逆に性悪説ベースの「まだ見ぬ冬の悲しみも」はつまらなかった(←これは作者自身が無理して、自分の価値観と異なるキャラを描いてるせいもあるか?悪役の描写がイマイチなのは「詩羽」も同じだし)から、一概には言えんけど。
作品の根底にあるのは、社会システムや個人の生き方・考え方における固定観念を排して改善しようという様々な提案なのだが、詩羽が「あなたにとってメリットがあるから」と説いても、どうしてもインテリが頭で考えたことを言ってるだけという印象が拭えない。富野由悠季がガンダムエースの対談で話していたように、こういう事をもっと俗っぽい言葉で語れる人材こそが必要なんだろうな。しかし「地球移動作戦」では、大部分の人間の判断力には難があると認めつつ、論戦で勝利するために手段を選ばないという姿勢を描いているので、これは作品ごとのスタンスの違いと見るべきか。

相互に関連するエピソードやキャラが伏線としてうまく機能している等、技術的な意味での完成度については、かなり高いように思える。敢えて言うなら、ラストがきれいにまとまり過ぎたのは当てが外れたな。図書館テロのネタに絡めて、最後のページで「驚愕のどんでん返し」が待っているかと期待していたのだが。

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